ナンバー1総合スポーツ誌が厳選した甲子園の「怪物」たち
Numberが選んだ甲子園の怪物たち-1
怪物・中田翔が語った斎藤祐樹
「私も取材に立ち会ったんですが、当時の中田翔選手、高校通算87本塁打の記録を引っさげてプロ入りしたものの、2軍にくすぶっていた時期。そこに、本当に残酷なんですけど、斎藤投手に完璧に抑え込まれた試合の映像を持っていたんです。それを見ながら4打席、全部しゃべってくれたんですが、でも本人はほとんど覚えていない。やっぱり、負けを認められなかったんだと思います」(高木)
そればかりか、当時まだ大学生だった斎藤のことを名前ではなく「彼」と呼び、プロとしてのプライドを滲ませていたという。
「ところが、この後から中田翔選手は打撃スタイルも変わり、スラッガーとして覚醒していくんです。普通の選手だったら、こんな取材は受けないし、記事の掲載にもNGが出てもおかしくない。でも、その認めたくない現実から逃げずに向き合えるからこそ、今の中田翔があるんじゃないかと思いました。中田選手自身、斎藤投手との対戦が『バッターとして生きていくターニングポイントになりました』と語っています。中田翔選手にそう言わせるところが、“斎藤佑樹のすごさ”だと思います」(高木さん)
いわば、中田翔という怪物を生んだのは、斎藤佑樹という怪物なのだ。
そしてじつは、「怪物が覚醒させた怪物」というのはKKコンビに通じるものがある。次回は、『清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実』(文藝春秋)の著者でもある『Number』編集部の鈴木忠平さんを交え、KKコンビの真実に迫る。
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